TAB 多読 -tadoku and beyond!-  

いっぱい読んでたっぷり聞けば、英語はかって出てきます!

  

2013/04/06


著名な英語教育学者、クラッシェン大先生が、自民党の「大学入試へのTOEFL導入」という提言に対し、苦言を呈しています。原文はこちら。大先生に「訳してブログに掲載してもいいですか?」とコメントしましたが、返事がないので勝手にやっちゃいます。(怒られたら謝る。)

以下、日本語訳です。(急いで訳したので読みづらい日本語ですが、ご勘弁を。)
  
ジャパン・タイムズ 3月31日社説「英語教育VS英語テスト」について
  Stephan Krashen
 社説で述べられていることは全く正しいと思います。お金をかけるべきものは英語教育であって、「テスト」でありません。1つ提案があります。コストをかけずに大きな成果をあげることができます。TOEFLのような高額なテストにかけるお金を、英語図書館の整備にあてるのです。英語図書館には生徒が楽しく読める、やさしくて様々なジャンルの本を揃えるのです。小説、マンガ、雑誌などあらゆる種類の英語の本を揃えます。読めば読むほど読解力も作文力もあがり、語彙も豊かになり複雑な文法規則も使いこなせるようになるということは、世界中で行われている研究で明らかになっています。また、簡単なものを気楽に大量に読むことで、もっと難しくて内容の濃い文章も理解できるようになるということも、世界中で広く証明されています。このことは母語にも第二言語にもあてはまります。日本の成人英語学習者に対する研究もあります。四天王寺大学のベニコ・メイソン教授は、2、30年前から現在まで調査を続け、多読の効果を示しています。最新の研究からは、指導も受けず、自ら本を選びながら読んだ人(あるいはそれに近い人)がTOEICTOEFLで大きなスコアアップを成し遂げていることがわかっています。昔ながらの勉強をしている人をはるかに凌ぐスコア上昇率なのです。
  
ジャパン・タイムス社説 日本語訳 (英語ムラに対する皮肉も入っています。)
  自民党の教育再生実行本部(遠藤利明本部長)は28日の会合で、すべての大学入学と卒業に英語運用能力テスト「TOEFL(トーフル)」を活用するなどの提言案を提示した。1兆円の予算を計上しているが、この提言が効果的だとは思えない。

 日本人の英語力向上が急務であることは確かである。TOEFLのスコア比較でも、アジアでは日本よりもスコアが低いのはカンボジアとラオスだけという状況では、国際社会から取り残されると考えてしまうのも無理はない。
 しかし、日本に必要なのは英語の指導法を改善することであって、テスト方法を改善することではない。テストのスコアを上げるよりも、大学を卒業したものが実社会の中で英語が使えるような教育方法を考えるのがよほど大切ではないか。指導方法を考えずにテストの点数で「足切り」するという政策は「試験テクニック」だけを意識した教育が促進されるだけである。
 1兆円の予算の具体的な使い道も示されていない。高額な受験料を誰が負担するのか。ちなみに、現在の受験料は225ドルである。現在の提言では全ての学生が最低でも入学時と卒業時の2回受験しなければならない。政府が受験料を負担することになれば、その分、教員は教材等の予算が削られることを意味する。テストを作成しているETSは非営利団体だが、莫大な利益を得ることは間違いない。日本の塾・予備校産業もTOEFLフィーバーに対する準備を着々と進めているはずだ。
 アジアの中でTOEFLの得点が高い国は、こののようなテスト強制はしていない。年少からコミュニケーション能力を重視した英語指導を行っており、また、英語教師の待遇や研修環境の改善、教材開発等を積極的に支援している。そのような国に追いつくためには、実質的な、そして意味のある英語教育の改革が必要である。
 確かに、TOEFLでは4技能がくまなくテストされる。しかし学生は試験を受けるだけではなく、実社会で英語を使わなければならないのである。英語でプレゼンテーションや議論をしたり、文書のやりとりをする技能はTOEFLでは測れない。
 試験テクニックではなく、本物の英語力を身につけさせるには、まずは教師が教授法を開発し、経験や研修を積むための支援が必要だ。提言では、教師に対する支援に関する言及は全くない。しかし、長い目で見れば教師を支援することが初期投資としては最も効果的である。教師はテスト対策の研究をするのでなく、実社会でのコミュニケーション能力を自分自身が身につけることで、生徒のロール・モデルになるべきである。
 学校も、生徒が英語学習に積極的に取り組めるような環境を整備する必要がある。1兆円もの予算があれば、英語圏への訪問やインターネットでの交流活動も実現できる。生徒の興味をひく教材を開発し整備することもできる。
 「テストが終われば英語なんて見たくもない」というのではなく、生涯にわたって英語を学習していく人間を育成することを英語教育の中心にすれば、将来、国際的に活躍できる人材を生み出すことができる。
 学生をテストに向かわせるのではなく、英語でのコミュニケーション能力を効果的に高めるような提言こそ必要なのである。自民党の問題意識は正しいかもしれないが、提言は問題の解決からは程遠い。

Krashen大先生の著書
読書はパワー
The Power of Reading: Insights from the Research
Free Voluntary Reading

5 comments:

  1. 初めまして。dezizと申します。
    自民党の「大学入試へのTOEFL導入」のニュースを初め見た時は、呆気に取られました。日本の英語教育者たちが少し時間をかけて、真剣に、質のいい(試験自体が英語をコミュニケーションの道具として使う方向に向わせることを踏まえたものとして作られているような)試験を作っていこうとするのを支える、とかいうのなら、まだ希望が持てますが、政治をやる人達は、そういう長期的ビジョンを持つよりも、手っ取り早く出来ることを好むのだな、と最初、思いました。ニュースを読むと、留学にスムーズに繋げるため、みたいなことが書いてあり、ふぅーん、そういう意図もあるのか、とは思いましたが、それでも乱暴だと思っています。

    しかし、今回コメントしています理由は、上のTOEFL導入についてのことを書くためではなくて、前回の記事以来、更新されるのを楽しみにしていましたので、記事を楽しみに待っている者もここにおります、ということをお伝えするためでした。こちらのブログを初めて拝見して以来、面白い記事ばかりだなと思って更新を心待ちにしてました。英語のスキルを身につけていくため、それに身につけさせるための、いろんなアイデア、ヒントが盛り沢山ですね。お忙しい中で執筆されているかと思います、更新を楽しみにしています!

    それでは。

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    1. ありがとうございます。ちょっと更新が滞っていてすいません。がんばりますので、今後とも応援よろしくお願いします。ちなみに、どんな記事がよかったか教えていただけるとありがたいです。

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    2. 特に気に入っている記事をいくつか挙げますね。(順不同ですが)

      1.左側トピック別カテゴリー「聞いたり」の②にあたる、“「単語」ではなく「メッセージ」を聞いていますか?”
      2.「書いたり」の①にあたる、“英語でアウトプットしませんか How often do you write in English?”
      3.「教育を考える」④の“教員研修にいかがでしょう?”Sir Ken Robinson
      4.「日本人なら英語はできる」⑥の“Broken English is good enough!”
      5.「授業で使えるリンク集」

      ここに挙げた記事に、私側の一貫した好みとか姿勢があるかというと、あまりないような気も
      します。ただ、何となく、自分の中には、英語やるのは使って何かするため、したいため、ということだけは一貫していて、それ以外の枝葉末節こだわってたらインプットを含めた『使う』ことに追いついていかなくなるので(自分のミスなんかで未だ正直落ち込むこととかがありはしても、基本は)、枝葉末節は切り落として、『意思疎通こそいのち』でやっています。

      そういう意味で、“Broken English is good enough!”や、“「単語」ではなく「メッセージ」を聞いていますか?”のメッセージは、貴重ですね。それに、使うことを奨励してあるほかの多くの記事も嬉しいわけですが、特に、“英語でアウトプットしませんか ?”の記事は、完璧じゃないままでいいのよ、というメッセージがしっかりあるので、いいですね。

      それから、“教員研修にいかがでしょう?”のSir Ken RobinsonのTEDTalkは、意図せずして「間違い」と評価されたアウトプットの中に、実はとても面白い題材がある、ということを思わせてくれる内容なので、気に入っています。私は第一言語に書き言葉がない難民の人たちに、基本的な(サバイバル的)英語と、英語の識字教育を教えていまして、識字力のある側からすると、考えもしないような『間違った』言語・行動アウトプットに日々出くわしています。ある意味とても面白いですし、一方で、標識とか商品ラベルを「読める」方向に、記入用紙に基本個人情報を「書ける」という方向に持って行かないといけないので、簡単ではないのですが、時々常識を覆されることが新鮮でもあります。成人学習者が、(アルファベット26)文字と「音」とを関連付けるのには、ものすごく時間がかかります。それでも、「読める」ようになっていくことで、学習者の世界が広がっていくのを見るのは、とても嬉しいものです。

      日本の公立学校システムの中で英語を教えていた時とは全く違う問題や発見に出会っていますが、つくづく思うのは、識字力を身につけられる環境に居たことは、本当に有難いと思います。と、こちらのブログで議論される内容よりも、はるかに低いレベルのことを書いててすみません。言い忘れましたが、アメリカ在住ですので、「聞けて話せるけど、読んだり書いたりが苦手」な学校教育を殆ど受けていない(上記以外の)学習者も多いので、日本その他の特にアジア圏ESL/F話者と逆の状況に出くわすことが多いです。いずれにしても、自分の生活や興味に関連した内容のものを読むことは、すごく「効き目」があると思っています。
      長文、お許し下さい。

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  2. クラッシェン大先生,いいことおしゃいますね。
    自民党の部会は、そもそも文部省の仕切りですから、発想が貧弱なのですね。TOEFULテストを関門に設ければ、それ用に勉強するしかないだろう、というのでは・・・。文部省の英語お役人に、絵本でも読ませてやりたいところです。

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  3. 都の教育庁見ていても、役人たちは実際の教育よりも、「教育」を使って、自分たちの権益を守ろうとしているとしか思えません。

    東京都教育委員会も、「学力スタンダード」を設定し、都立高校共通学力テストを計画しています。ここでもまた金が動きます。

    国民がもっと声をあげなきゃいけないと思います。

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